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第1回コラム 「新事業立ち上げの勘所と道標」
-GEMStartup TOKYO事業化プログラム第2回講義レポート

本コラムでは、2025年9月より開始した「新事業発掘プロジェクト事業(GEMStartup TOKYO)」の活動を紹介します。今年度は4回のコラム発信を予定しており、初回となる今回は、GEMStartup TOKYO「事業化プログラム」の第2回講義の様子や参加者の声をお届けします。

「新事業発掘プロジェクト事業(GEMStartup TOKYO)」とは

東京都は、大企業等の民間企業で培われたノウハウやアイデアを起業や新事業創出に結びつけるための取組みとして「東京都新事業発掘プロジェクト事業(GEMStartup TOKYO)」を実施いたします。
本事業では、分野を超えた起業家やベンチャーキャピタリスト、各分野のプロフェッショナルの方々に協力をいただき事業化に向けたサポートを実施いたします。

事業化プログラムとは

GEMStartup TOKYOのプログラムのひとつ“事業化プログラム”では、事業計画を持つ選抜メンバーに対し、講義・ワークショップ、ピッチ、個別メンタリング、VC等とのマッチング等、起業や新事業創出に向けたプログラムを実施します。

9月11日、東京都主催の「GEMStartup TOKYO 事業化プログラム」第2回講義が開催されました。講師はイグニション・ポイント株式会社の髙橋悠氏。参加者26名が集い、「新事業立ち上げの勘所と道標」をテーマに、講義とワークショップを通じて実践的な学びを深めました。

講師紹介
髙橋氏は家電メーカーや外資系コンサルティングを経て現職。製造・通信・商社・製薬など幅広い業界の新規事業支援に携わり、戦略策定から実行支援までを強みとするコンサルタントです。

講義:新事業立ち上げの実践プロセス

髙橋氏は新事業立ち上げを「①事業構想→②事業性検証・改善→③事業立上/展開→④事業拡大」の4段階に整理し、本講義では②の「事業性検証・改善」に焦点を当てました。
講義は五つの主要ステップで構成されました。

1. 検証設計

「なぜ・何を・どう検証するのか」を明確化する段階です。経営者や関係者との情報共有を通じて前提条件や制約を整理し、効果的な検証計画を立てる重要性を強調しました。

2. MVP構築

顧客に価値を提供できる最小限の製品=MVP(Minimum Viable Product)を作り、アジャイルに検証を重ねることが新事業成功の鍵と説明。
「紙芝居(ドキュメント型)」「スモークテスト」「LP(ランディングページ)」「コンシェルジュ」「オズの魔法使い」「プロトタイプ」など、検証目的や予算に応じたMVPの多様な手法を紹介しました。
また、仮説の立て方と“引き算の設計”を重視。「仮説を絞り、目的に忠実に動くことが迅速な検証につながる」と述べました。

3. 協業先の探索

自社だけで完結しない場合は協業先の探索が必要です。要求事項を整理し、候補を比較・交渉する際は「各会議で何を合意すべきか」を明確に設計すること、Win-Winの関係構築を意識することが肝要と語りました。

4. 初期顧客の獲得

顧客獲得は「定義→販路検討→販売開始→促進」の4ステップ。

  • 展示会などのプッシュ型と、情報発信によるプル型を併用すること。
  • 営業資料をPDCAで改善し続けること。
  • 既存顧客との関係を意識しながら新しい顧客層を切り拓くこと——がポイントです。

5. 方向性の検討

検証結果から、顧客ニーズ・収益構造・体制を再評価し、事業計画を更新します。特に「数字の仮説を早期に意識し、検証を通じて精度を高めること」が重要だと強調。
また、組織体制にはカーブアウトやスピンアウトなど複数の選択肢があり、社内での擦り合わせが欠かせないと指摘しました。

ステージゲートの考え方

属人的判断を防ぐため、髙橋氏は「ステージゲートプロセス」を紹介。
各フェーズにゲートを設け、定量的・客観的に評価する手法で、①評価基準を共通化できる、②段階的にリスクを把握できる、③磨き込みの方向を見失わない、というメリットがあります。既存事業との比較が難しい新規事業において有効な仕組みです。

ワークショップ:事業の現状を見える化

後半はワークショップ形式で実施。

  • 個人ワーク①ではステージゲートを使い、自身の事業の進捗と課題を評価。
  • グループワークでは課題共有と意見交換を通じ、互いに新たな視点を得ました。
  • 個人ワーク②では2月の最終報告に向けたゴールとアクションを設定し、メンターと共有する準備を整えました。

参加者同士の真剣な議論と前向きな雰囲気が印象的で、各自の事業の輪郭を再確認する機会となりました。

まとめ

講義の締めくくりでは、「足りないプロセスに気付けた」「フレームワークを使うことで自分の事業を客観視できた」といった声が相次ぎました。ある参加者は「体系的で実践的な内容に加え、仲間との議論で多様な視点を得られた」と感想を述べる一方、投資判断のタイミングという現実的課題にも言及しました。
髙橋氏は最後に、「変化の速い市場では、仮説に基づく検証設計とスピード感あるPDCAが新事業を加速させるエンジンになる。一方で、初期の目的や軸を見直す冷静さも忘れてはならない」と締めくくりました。

今後に向けて

GEMStartup TOKYO事業化プログラムは全15回。2月の成果報告会に向け、参加者は今回の学びを糧に事業化へと歩みを進めます。

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